無気力さんと同居するらしい


大人しく私の前にやってくる同居人

私はソファに座って、その前の地面に真琴君が座ってる状況


…これは、めんどくさがりの髪を乾かしてあげるだけの

お節介な行為

それ以外の意味なんてない、持ってない


「なにぶつぶつ言ってんの?」

「な、なにも」

ぐしゃぐしゃと真琴くんの黒いサラサラな髪の毛をタオルで拭く



そういえば、バスの男の子もこんな感じの髪の毛だった

「俺の髪なんかついてる?」

「え?」

そう言われて、私が真琴くんの髪の毛を熱心に見ていたことに気づいた


パッと手を離す

…や、やっちまった

「ご、ゴミがついてた」

「あそう」

落ち着け私

冷静に。

無じゃ。無。


「…あんたも」

ふぃ?

無の境地に至ろうとしていた私を、首を反らせて見ていた真琴くんがボソリと言った

「ゴミついてる」

そう言って真琴くんの大きな手が私の髪に触れた


…っ


「ありがとう」

「ん」

…なんだこれ、なんだこれ

心臓がうるさい


そ、そりゃそうだ

男の人がいる生活なんて初めてなんだから

それだけの理由だ


自問自答を繰り広げ、煩悩を吹っ飛ばすように豪快に真琴くんの髪の毛を拭いた

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