ゼツボウカクレンボ


「無駄だよ。」

俺の手は,死神の顔面を透けていた。

「ぁ……ぁ……」

行き場のない手が宙を舞う。

「本当,人間って哀れだね。
……ざまあみろ。」

俺は死神の笑った顔を初めて見た。

死神は静かに,ゆっくり,嗜めるように言った。

「すべてを,消してあげる。
他の人間から,君の記憶をすべて消し去ってあげる。
大丈夫。すぐに生まれ変われるはず。」

「嫌…嫌嫌嫌!!
待ってくれ!
お願いだ!助けてくれ!」

「存在が消えるのってね,死ぬよりも残酷だよね。
だーれも君のこと覚えていてくれないんだもの。
悲しいねぇ。まあでも,しょうがないよね。
それじゃあ,ちゃんと罪を償ってきてね。
………さようなら………」

「嫌だあああああああああ!!!!!!!」
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