溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 昌美さんが連れてきてくれたお店は、病院からそう遠くないカフェだった。はじめて入るお店だが、北欧風の雰囲気のかわいらしいお店でディスプレイにはケーキがいくつも並んでいてどれも美味しそうだ。

 窓際の席に向かい合って座る。メニューを先に見せてくれた。

「わたしは、もう決まってるの。だからどうぞ」

「なにかおすすめはありますか?」

 昌美さんは常連のようなので、おすすめを聞いてみる。

「アールグレイとミルクレープをわたしはいつも注文するの、おすすめよ。まあ、冒険できない性格だから、いつも同じものなんだけどね」

 勧められたミルクレープは間に色とりどりのフルーツが挟まっていてとても美味しそうだ。わたしもそれに決めた。

「わたしも同じものにします」

 手をあげると店員さんがすぐに気がついてくれた。注文を済ませると、昌美さんは優しい笑顔でわたしを見ている。

 勢いでついてきてしまったけれど、いったいなんの話なんだろう。

 やはり彼氏の身内に会うのは緊張する。

 天気の話など、世間話をしているうちにケーキと紅茶が運ばれてきた。お互い感想を言い合いながら半分くらい食べた時点で、昌美さんが話を切り出した。

「わたしね、和也の彼女を紹介してもらうの、瑠璃さんがはじめてだったの」

「そうなんですね。まあ、あの状況だと仕方なかったとは思うんですけど」

 ハプニングで出会ってしまったのだから、わざわざ紹介したのとは違う。

「でもきっと、ごまかそうと思ったら、ごまかせたはずよ。和也ってそういうのうまいでしょ?」

「まあ、たしかに」

 ウンウンと納得したわたしを見て、昌美さんは「正直なのね」とにっこり笑う。

「だから、わざわざ彼女だって紹介した時点でね、和也が本気だってことがわかった」

 昌美さんは手に持っていた紅茶のカップを置いて視線をカップに移す。

「気を悪くしないでほしいんだけど、わたし和也が瑠璃さんを選んだこと、少し意外で驚いたの。なんだかわたしが漠然と抱いていた弟の彼女のイメージと違ったから。勝手なこと言ってごめんなさいね」

 本当に申し訳なさそうに謝られた。
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