【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

「うん、旨い」

「本当?お昼から煮込んでたから味が染みこんでるでしょう?
オクラの胡麻和えとカボチャの味噌汁も食べてみてよ~」

「うん、全部旨い。まぁ静綺の作る物で不味い物はないからな。
あーー…疲れた体に染みわたって行く。ご飯おかわりな」

「はいはい」

部屋着のジャージに着替えても絵になるのは、姫岡真央だけだと思っている。ただのジャージだとしても真央が着るだけで…王子様。いや王様に見えるから不思議なもんだ。

彼女のひいき目もあるのかもしれないが。

ご飯茶碗を置いて、さっきの嬉しい事について尋ねた。
そうしたら真央は子供のような顔をして、口を開きだした。珍しくはしゃいでいる模様。

「実はな、映画の主演が決まったんだ」

「そうなの?!」

「しかも黒川監督の映画でな!」

「誰…?」

「あぁー?お前知らねぇの?黒川監督つったら日本で有名な監督でな、アカデミー賞にもノミネートされたりしてるんだぞ」

「え?!そんなすっごい人なの?そんな人の映画の主演なんて真央すっごいじゃんか!」

「まあな、俺って姫岡真央だから当然だけどな」

鼻高々にそう言うと、いつもの得意な顔を見せる。乗せるとどこまでも登って行ってしまうタイプなんだから…。

「それで…撮影はドラマがクランクアップしたらすぐに始まりそうなんだ」

その言葉には、私の顔色を伺うように申し訳なさそうな顔をした。
それはつまり、この先もっと忙しくなるという事だろう。

「しかも1週間程イタリアで撮影がある…」

「イタリア?!すっごい!私なんて外国行った事ないよ?」
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