【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「ちょっと!」
駆け寄ろうとしたら再び強く腕を握られて、無理やり引きずられるように居酒屋から外へと引っ張り出された。
人混みを掻き分けながら手を引っ張られても全然力を緩める事はなかった。
その横顔は苦しそうに歪んでいて、全くこちらを向こうとはしなかった。何度名前を呼んでも反応のひとつさえしてくれない。…こんなに怒っている真央は、初めて見たかもしれない。
そのまま駐車場まで連れて来られて、車の中に押し込まれるように乗せられた。
乱暴に車のエンジンをかけて、ハンドルを切る。苛立ちは運転にそのまんま現れている。苦しそうに顔を歪める、その中から捲れて見えた悲しみを前に何を言い訳をした所で今は信頼を勝ち取る事は出来ないだろう。
しかし一体謎だ。
何故真央にあの場所までバレてしまっていたか…。
暫く車を走らせて、人通りの少ない場所で車を停める。車を停めた途端に真央ははぁーと長い息を吐く。私はというと、ずっと固まったまま動けずに、膝に置かれた両拳を見つめたまんま下を向いていた。
冷たい沈黙が流れる薄ら寒い車内。暫しの沈黙を打ち破るかのように真央が口を開く。
「何故嘘をついた…?」
「ごめんなさい…」
何を言っても言い訳にしかきっと聞こえない。
けれど言い訳のひとつもせずに謝る私は、更に真央の苛立ちを煽る。
「俺は、謝って欲しいんじゃねぇよッ。
何で嘘をついたかって聞いている。何が教授に会うだ、大学の友達と会うだって?
それがあの小学校の同級生とやらの雄太って奴なのかよッ。
何もやましい事がねぇっつーんなら、堂々と言えるだろうが……!」