【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「何度5歳の時に履歴書を送った事を後悔したか分からないわ」
そう言った彼女の横顔は悲し気だった。
「あの時私が履歴書なんて送らなかったら、真央が芸能界なんて入らなかったらあんなに真央を苦しませる事はなかったと思った。
あの子は周りの大人の為に期待に応えようと頑張って頑張り過ぎて、調子が良い時は誰だって親切にしてくれるし優しくしてくれる、けれど厳しい世界だから少しでも人気が落ちたらそっぽ向かれてしまうような世界なのね。
だからそんな大人の裏切りを見て育ってきたあの子はいつしか笑わなくなってしまって…」
「えぇ……」
真央の過去の話は聞いた事がある。
彼を苦しめてきた過去と芸能界の仕事。
元々繊細すぎた彼は過去の傷を傷跡には出来ぬまま、ずっともがき続けてきた。
「中学を入学を機に仕事を休ませる決断をさせたんだけど、1回芸能界に入ってしまうと普通の世界に戻るのは中々難しかったみたいで。
あの子が傷ついているのを分かってて、私達両親は何も出来なかったの。
だから高校を卒業してまた自分で芸能界に復帰したいって言いだしたのはびっくりしたけど」
「きっと…何だかんだあっても…真央は演技をするのが好きだったんだと思います。
好きじゃなきゃそんなに苦しまないですよね。好きだから、苦しむんだと思います。
私……多分真央は何度道を逸れてしまっても結局最後は演技の道を選ぶんだと思います――。
だって演技をしている時の真央が1番輝いているから」
にこりと笑ってそう言うと、彼女も同じ顔をして優しく笑った。