恐怖庵
初めは優しいノックに優しい声だったのですが
答えずにいるとそれはだんだん荒々しくなり…
ドンドン
「裕太さん あけて」
ドンドンドン
「裕太さん あけてほしいな」
ドンドンドンドン
「裕太さん あけてよ」
ドンドンドンドンドンドン
「開けろよ」
荒々しいノックにきつい言葉。
これがあの大人しそうだった竹内まみなのか?
そっと
本当に竹内まみなのか
もう一度覗き穴を覗いた僕の背中を冷たい汗がスゥっと流れました。
さっきまで笑っていたはずの彼女が
細かった目を握りこぶしほどグッと開いて
こちらを覗いていたのです。
その目は真っ赤に充血し
髪はなぜか濡れており
街灯に照らされたその顔は青白く血の気が
まったくありませんでした。
ドンドンドンドン!
ドンドンドンドン!
《あけろ!あけろ!あけろ!あけろ!
あげろ!!あげろ!!あげろ!!あげろ!!》
もうそれはノックなどではなく
両手で思いっきりドアを叩く感じ
それと同時に地鳴りのような低い声が
深夜の静まり返った空間に響いていました。