若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「ごめんなさい、琉成さん。…でも、貴方が教えてくれた絵の世界が、今も私の(いしずえ)になっている。だから、それも大事にしていくから。琉成さんも自分に合った人と、友禅を描いていって」


生意気だったかな…と不安になりつつ手を組み合わせる。

私が祈る様なポーズを取って見つめると、琉成さんは深い息を吐き出し、ゆらり…と上体を揺らして背中を向けた。


「……暫く此処には来ない。…でも、友禅は描き続けるから」


それが自分にできる唯一のことだから…と囁き、フロアの方へ去っていく。

肩を落として行く背中を見つめると多少の罪悪感も感じたけれど、彼の将来を願い、きゅっと唇を噛み締めた__。




「香織」


上から声がしてそっちを振り向くと、急に頭を抱きしめられ、ホゥ…と深い息が降り注いでくる。


「…馬鹿。黙って帰るから、こんな目に遭うだろ」


何事もなくて良かった…と改めて彼が安堵している。
それを見るとこっちは急に反省し、「ごめんなさい」…と謝った。


「朝になって帰るのも恥ずかしいな…と思ったの。
あの服装で街中を歩くのも気が引けたし、まだ薄暗いうちなら見られる可能性も低いだろう…と思って」

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