カフェの店員はデートします!
ヒロインがそう言った後、主人公は涙をこぼしながら『ありがとう……』と呟く。私の目にも涙が浮かんでこぼれ落ちた。胸がギュッと温かくなる。

そのまま二人が唇を重ねるシーンがスクリーンに映し出される。綺麗だな、と思いながら見ていると私の手にぶわりと黒井さんの大きな手が重ねられた。

「黒木さん?んっ!」

横を見た刹那、私の唇に黒木さんの唇が触れる。そのまま何度も優しく口付けられて、私の胸がキュンと音を立てた。

「すみません、つい……。こんな幸せな気持ち、初めてです」

そう言って笑う黒木さんが愛しい。きっと、私と黒木さんの始まったばかりの恋の物語はどんな名作にも負けないほど煌めいているんだろう。





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