あの丘で、シリウスに願いを
まことが、やっと自分の部屋で眠りについた頃。



部長室で雑務に追われていた翔太は、白衣のポケットからスマホを取り出した。

また来た。北山蓮から、まことを引き抜きたいという内容のメール。毎日のようにしつこく送られてくる。


このことを知ればまことは、北山のもとで働きたいと言う気がする。なんといっても場所が彼女の大好きなベリヒルなのだ。
ここは、職場環境の改善に力を注いでいるがなかなか思い通りにいかず、まことに負担をかけているのが現状。これ以上の過重労働ではたぶん彼女の気力も体力も限界になることはわかっている。彼女の医師としてのキャリアを考えれば北山に託すのも悪くない。

でも。

わかっていても、やっぱり嫌だ。
最初から、彼女が次期エースとしての実力がつけば離れる予定だった。でも、今ではない。時間はまだあるはずだ。

翔太は北山からのメールは無視することにした。


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