あの丘で、シリウスに願いを
「…もう。翔太先生…相変わらず人の心を掴むのがうまい。どうしてベリーピンク色…これ、私が受け取らなかったらどうするつもり?」

「まことは、受け取ってくれるよ。イブに大星堂でこれを見つめる目が、本当はピンクに憧れてるって言ってた。女の子らしくいることに抵抗あるんだろ?俺が一緒の時は、自分らしくいて。俺にとって、まことは一番輝く女性だよ。
叶えたい願いは一緒だから。
いっそ、一条翔太の全てをあげるから、結婚しよ?ずっと俺と生きていこ?
まことが打った願いのボール。俺、ちゃんと受け取ったから。ここまで、走っておいで。この先は一緒に走るから」

まことは、もう迷わなかった。翔太の胸に飛び込む。翔太は優しく包み込むように抱きとめてくれた。

「あなたは私にとって、特別な存在です。
一条翔太が、好き。許されるなら、あなたのそばにずっといる。だから。…もう、絶対手放したりしないで。お願い」
ぎゅっと抱きついたまことに、ニッコリと微笑んでくれた翔太の瞳は涙で濡れていた。

「嬉しいなぁ。どんなに努力しても、『普通』を超えられない俺が、まことの『特別』になれるなんて。それだけで俺の人生は報われる。
二人で最高の未来を生きていこう」

翔太はまことを抱きしめて、愛してると何度もささやいてくれる。痛いほど打ち付ける心臓に手を置いて、引き攣れた手術跡に唇を寄せて大丈夫と言ってくれる。
抱きしめられた翔太の肩越しに、ベリーヒルズの輝く夜景が見えた。



やっぱり、心震えるほど、美しい。



ラグジュアリーなベリーヒルズの夜は、終わらない。




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