あの丘で、シリウスに願いを
最終章 シリウスがつなぐ未来
一年後。

「ねぇ、水上さん六平先生と仲良いよね?
六平先生って、カレシいるのかな?」

ここは、光英大学付属病院。育児休暇を終えて看護師として復職した水上柊子は、ナースステーションに入り浸る研修医に捕まっていた。

「気になるんですか?」
「うん。だって、めちゃくちゃカッコいいじゃないですか」

「こら、検査の準備。さっさと行く」
そこへ話題のまこと本人がやってきた。研修医は大慌てで走っていく。

「六平先生にカレシいますかだって。知らないって怖いわねぇ」
「そんなことばっかり言ってるから成長しない。全く困った研修医よ」

まことは、半年前にベリーヒルズの総合病院からこの大学病院に異動していた。今は、指導医として研修医を育てつつ、自己研磨も欠かさない充実した日々を送っている。

「まこと先生こちらチェックして下さい」
まことは柊子に渡された書類に目を通してサインする。その手にはベリーピンク色のシリウスだ。

「あ、柊子さん、そろそろ時間じゃない?お迎え」

まことは時計を見て声をかける。柊子は、病院内の託児所に冬輝を預けていた。

「あ、大丈夫。今日は洸平さんが行ってくれるから」

水上医師は柊子の復職に合わせて、大学病院に戻ってきていた。
光英大学付属病院が、DMAT(災害派遣医療チーム)指定医療機関になり、水上は専門の資格を取得し、DMATに登録したからだ。
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