あの丘で、シリウスに願いを
「大丈夫ですか?そのお腹じゃ簡単に立ち上がれないでしょう」
まことは彼女に手を差し出した。

「ありがとうございます。助かります」
彼女がまことの手を取った、その時だった。

「…っ!」
彼女がお腹を押さえてうずくまる。

「痛むんですね?
…16時15分。いよいよ陣痛かな?」

まことは彼女の体を支えながら、腕時計で時間を確認する。


「すみ…ません。大丈夫です」
「ご自宅は近いですか?お送りします。タクシー呼んだ方がいいかな」
「あ、いえ。すぐ、そこなんです。…ふぅ。
痛みが引きました。この隙に戻ります。私は大丈夫ですから。ご迷惑をおかけしてすみません」
「迷惑なんて、全然。お一人で帰す方が心配です。さ、行きましょう」

まことはやや強引に、ベンチにあった彼女の荷物を持つと、彼女と一緒に歩き出した。

「ありがとうございます。私、実は横浜に来たばかりで知り合いが少なくて…。助かります」
「私も、仕事で3カ月前に来たばかりなんです。
同じですね」

「あ、ここです!」

< 38 / 153 >

この作品をシェア

pagetop