あの丘で、シリウスに願いを
ドサッと何かが落ちる音がした。直後につんざくような子供の泣き声が響き渡る。
驚いて振り返れば、すべり台から落ちたのか男の子が泣いていた。

「大丈夫!?」

真っ先に駆け寄ったのは、ベンチに座っていた例の女性だ。さっきまでしんどそうにしていたというのに、その素早さに驚いてまことはちょっと出遅れた。


「いたーい!」
「お尻から落ちたのね、ちょっと見せてね」

女性がしゃがみこんで男の子を確認する様子を見ていて気づいた。彼女は、たぶん医療従事者だ。手つきが慣れている。おそらくは、看護師なのではと思う。

「すごい、あんなところから落ちて無傷だ。強ーい!」
「ボク、強い?すごい?」
「うん、強いよ、すごい!慌てなくていいから、気をつけて帰るんだよ?」
「はぁーい。おばちゃん、ありがと」


優しく頭を撫でられて、男の子はまんざらでもない様子で立ち上がると、何事もなかったように元気よく駆け出して行った。


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