あの丘で、シリウスに願いを
「ところで親父、六平先生のここは大丈夫なの?」
その時、手元の資料を見ながら、翔太が言った。
ここ、といいながら、自分の心臓をトンと指で示して。

「どんなハードワークでも全く問題ない。大丈夫だ、翔太。完治している」
教授が胸ポケットからボールペンを取り、翔太が見ていた資料に何やらサラサラと書き足した。

「WNL(Within Nomal Limits 正常範囲)ね。そ。親父殿のお墨付きがあるなら、大丈夫か。
オッケー、じゃあ、よろしく、六平先生」

まことは、翔太が差し出した手をぎゅっと握る。拓人とも握手を交わす。

教授は、白衣の胸ポケットにボールペンをしまい、まことと握手をした。
昔と変わらない黒い名前入りの高級ボールペンに、まことは、思わず笑顔になる。


ーーあのボールペンが花マルを書けば、今日は最高の日になる。
そんな幼い日のドキドキを思い出した。




「こちらこそ、よろしくお願い致します」


< 4 / 153 >

この作品をシェア

pagetop