あの丘で、シリウスに願いを
「やぁ、まこと先生、よく来てくれたね」
「一条教授」

まことは立ち上がり、入室してきた人物に深々と頭を下げた。
現れたのは、この光英大学附属横浜新医療センター長、一条利周(いちじょう としちか)教授だ。

「まだまだ開院したばかりで手探り状態ですが、よろしく頼みます。翔太が頼りなければ私に相談して下さい」
「えー、親父殿のカミナリは勘弁して下さい」
「じゃ、私でもいいですよ。年下ですが」
「拓人の小言も勘弁してくれよー」

目の前にいるのは、日本が誇る巨大グループを率いる一族、のはずだ。
日本医学会の権威にして、一条家の現当主の弟、利周。その息子、翔太。
そして、一条家の御曹司にして次期当主の拓人。
まことからすれば、雲の上にいる存在。
それが、目の前にいる三人は尊大な態度もなく、好感が持てた。

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