地獄船
「1位はダントツで内藤綾だ。これはもう揺るがない。間違いない事実だ」


鬼が熱っぽい声でそう言い、綾を見た。


綾は頬を赤らめてほほ笑んでいる。


そこだけ切り取ってみると、まるで恋人同士のように見えてムカッとしてしまう。


「2位は成瀬早人。お前もなかなか見事だったぞ」


下手な事を褒められてもうれしくはない。


だけど、これで俺と綾は命を繋ぐことができたのだ。


俺はまだ綾を守ってやる事ができる。


その事は素直に嬉しいと感じた。


「3位は片岡浩成。お前はまぁまぁだったけれど、他の2人に比べれば上手だった」


浩成がホッと息を吐き出すのが見えた。


ここまでは予想通りの順番だ。


問題は、小恋か、ミヅキか。


「後の2人は本当にへたくそだったなー。耳がぶっ壊れるかと思ったなー」


鬼が耳をほじりながらそう言った。


引き抜いた指には大きな耳くそがこびりついている。
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