地獄船
「な……んで……」


柱に激突したのは千春だった。


顔は見えないが、その髪型には見覚えがあった。


柱に肉が食い込んでいるのか、激突した箇所にへばりついたまま離れない。


白い柱が千春の血によって徐々に赤く染まって行く。


その中に赤い肉片のような、臓器のようなものがまざりあい、ボトボトと落下していく。


下にいた子鬼たちが口を開け、落ちて来る千春の一部を食べていた。


豚や牛と同じなんだ。


鬼にとって、俺たちは食べ物だ。


食べる前に遊んでいるんだ。


ゾッと背筋が寒くなった。


吐き気が込み上げてきて、慌てて紅茶でそれを押し込めた。


隣にいる綾も、ミヅキも小恋も文夫も青ざめている。
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