蜃気楼
そのあとのことは記憶がまばらになっている。慣れ親しんだ振動で、何者かに車で運ばれていることは理解したが、何が起こったのか完全に把握することは困難だった。


 招集から15分後、武装したトウカの部隊は施設の門の前に並んでいた。
馬の背に乗り、静かに開門を待つ。シオリは自動車を見ては残念そうにため息をついている。

この柵を超えると、国民の居住区でもある市街地がある。
その市街地を抜けると無法地帯だ。

民を守るために、市街地ごとに周りを囲むように張り巡らされた高い柵は、野放しになった感染者たちと民衆の接触を最小限に抑えることが目的である。

「本日の討伐は、南西部の柵付近で新たに発見された感染者が対象だ!この辺りで感染者の発見が相次いでいる!六花の手引きかもしれんが、お前たちは感染者の生け捕りと自分の身を最優先で行動するように!」

セキグチの声に続いてサツキの声が聞こえてくる。

「トウカとシオリは状況把握を優先すること!何体も狩るのではなく、少しでも解毒に役立つような情報を探すこととする!」

線が細いサツキだが、声はよくとおる。その言葉を聞いて、シオリがあからさまに悲しそうな顔をするのが分かった。

「嘘だろ…!今の聞いたか!?」

「聞こえたけど」

指示がそうなのだから、特に何か思うことはないけれど。トウカはわずかに首を傾げた。

「残念じゃないの!?」

「これが私たちの任務なんでしょう」

「いや、そうなんだけど!もっとバンバン狩ってさあ!六花と会えるなら戦いたいじゃん!」

「確かにそうかもしれないけど」

研究も大事でしょ、と諭すとシオリはむすっとすねたような顔をする。

「この堅物!」

子どものように文句を言うシオリを放置し、トウカは門を見つめた。
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