俺様外科医との甘い攻防戦

 いい匂いに誘われて、目を開ける。

「ああ。起きたか。そろそろ起こそうと思っていた」

 スラックスにシャツ姿の久城先生の声を聞き、体を起こす。

 あれ? 服、着てる。

 自分の格好をマジマジ見つめていると、「着させておいた」と普通のトーンで言われる。

「ルームサービスを頼んだんだ。食べよう」

 トレイをベッドまで運ばれ、壁に背を預け横並びに座る。

 食べ出すと、お腹が空いていたのだと気づく。
 目まぐるしく起こった出来事を、まだ処理しきれていない。

 それなのに、久城先生はとんでもない発言をサラリと口にする。

「結婚、しようか」

「なに、を、おっしゃって……」

 私の動揺とは裏腹に、理路整然と話す。

「陽葵は、遊んで捨てられそうな不安があるから、医師は嫌なのだろう?」

「それは、はい」

「結婚すればいい」

「そんな、簡単に!」

「簡単じゃない。本気だ」

 真剣な眼差しに、こちらの思考回路が停止しそうになる。
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