俺様外科医との甘い攻防戦

 病院につくと、一番に歩美が駆け寄ってくる。

「おはよ。なかなかやるわね。久城先生」

「え?」

 そうだ。忘れていた。
 病院内で騒いだせいで、噂になっているんだった。

 身の程知らずも甚だしいって、酷く言われているんじゃ……。

 恐る恐る歩美を見つめると、小首を傾げられる。

「どうしたの? 久城先生との婚約を黙っていたからって、怒ってなんかいないわよ?」

「は?」

 え、婚約したの?
 え? 誰と誰が?

 歩美に問い質したくなる気持ちを無理矢理抑え込み、ぎこちない笑みを浮かべる。

「いや、えっとちょっと驚いて」

「あれ? まだ内緒だった? でも私、脳神経外科の看護師から聞いたよ。しかし仕事が早いな。久城先生」

 どういうこと?

 あの日の逃走劇が、そこまで尾ひれがついて膨らんでいるわけ?
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