俺様外科医との甘い攻防戦

 それが、時間が過ぎて熱も冷め、心持ち頬のこけた久城先生を見ると強い言葉をぶつける気になれない。

 それに……。

「『最善を尽くす』って、病院内で恋人気分を出さないように気をつける。という意味ではなかったんですね」

 気持ちが通じ合ってから、初めての出勤日の朝。

 私が想像していた『最善』と、久城先生の『最善』は、きっと違っていたのだ。

「そうかもしれないな。誤解しているだろうな、とは予測できていたが……」

「わざと、誤解させたままにしたんですよね」

 今も敢えてなにも言わないのだろうなと思える沈黙のあと、私は仕方なく口を開く。

「お疲れでしょうから、今日は寝ましょう。朝、少しだけお時間もらえますか?」

「いや、今でいい」

「でも……」

「このままでは、一緒に眠らないと言うだろう?」

 片眉を上げ、拗ねた子どものような顔を見て、吹き出してしまった。

「その顔はズルイです。喧嘩は一時休戦します」

 片手を前に出し、握手を求める。
 その手に、大きな手が重ねられた。
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