俺様外科医との甘い攻防戦
目を覚ますと久城先生の姿はなく、ただ着崩れた危うい格好と、微かに残る彼の香りだけが一緒に寝た事実を物語る。
至近距離どころではない。
事後の恋人のような寝姿に、緊張して眠れなかった。
しばらくの間、眠れないと思っていたけれど、限界で寝落ちしてから、久城先生が起きたのだろう。
全く気づかなかった。
あんな風に対峙して、男女の仲になっていたかもしれない。
けれど、そんな懸念が小さなことに思えた。
とにかく体を休めてほしくて。
見当違いの行動だったかもしれない。
前に『奥村さんといたらよく眠れそう』と話していた言葉を頼りに、どうにか久城先生の役に立ちたいと思った。
『せめて三ヵ月付き合ってくれ』と言われたお試し期間ではある。
試す側は私かもしれないが、久城先生が無理をするのは嫌だと思った。
リビングにいくと、ローテーブルに一枚の書き置きがあった。
『久しぶりによく眠れた。ありがとう』
走り書きを見て胸が温かくなる。
「良かった。少しは役に立てたみたい」
寝不足ではあるが、心は満たされていくのを感じた。