俺様外科医との甘い攻防戦

 ベッドに下されると「どうなっても知らないからな」と、久城先生は覆いかぶさってくる。

 胸に顔を埋められ、心臓があり得ないほどに音を立てる。

「壊れそうなくらい速いぞ」

 誰のせいだと思って……。

「柔らかいな。変な気が起きそうだ」

 胸に顔を寄せた状態で、そういう危うい話をしないでほしい。

 憤慨していると、服の隙間から手を入れられ、肌に直接手が触れる。

「あっ」

 自分の声じゃないみたいな甘い声が出て、顔から全身が熱くなる。

「襲われたくなかったら、余計な声は我慢しろ」

 誰のせいだと‼︎

 手はゆっくりと肌を滑り、体はぴったりと寄せられる。

 それからしばらくして固まったままの私の耳に、規則正しい息遣いが届く。

「眠り、ました?」

 本人に聞くのはおかしいのはわかっているが、つい声が漏れる。

 この問いに返事はなく、安堵のため息を吐き出す。

 襲われない自信があったわけではない。
 ただ、久城先生は、酷い行動は取らないという、核心にも似た思いがあったのかもしれない。

「これ、私が眠れるかな」

 まだドキドキと騒がしい胸と、久城先生の頭を抱え、無理矢理に目を閉じた。
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