遺書
「蛇島さん、アレは渡してくれたか?」
「蛇島さん、アレをよろしく頼むよ」
「蛇島さん、いよいよ明後日だな」

呪いのように尋ねる先生の言葉に僕は我慢出来なくなり、ある仕掛けを用意した。
先生が死ぬ前夜、僕はあのアパートに訪れていた。
先生は突然部屋に訪ねて来た僕を見て訝しげたけど、すぐに側のメモ帳を見てから声を掛けた。

「ああ、蛇島さんか。今日はどうしたんだ?」
「…先生、やはり引退するおつもりですか?」

僕の質問に先生は顔を曇らせて少し寂しげな表情を浮かべる。

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