遺書
「ああ。もう何のアイデアも浮かばないんだ。俺の役目も終わりだ」
「そうですか……」
「ところで、遺書も明日公開されるんだろ?」
「ええ、もちろんです」
「良かった。念の為、由理にも渡したが先に雑誌で知りそうだな」
「…今、何とおっしゃいましたか?」
「由理にも遺書を渡したんだ。あいつが一番俺の作品を楽しみにしているからな」

まさか遺書をもう一つ用意していると思っていなかった僕は焦った。このまま次の日を迎えると由理ちゃんの遺書で先生の病気を知られてしまう。そしたら先生が小説を書くことは二度とない。なんとしてでも、先生が病気のことを隠さないと…。

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