お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
「気がつかなかったのか? 俺は初めて病院の地下駐車場で彼に会ったときに、彼が美月を見る目を見てすぐに勘付いたがな」

「……まったく気づきませんでした」

「美月は本当に鈍感過ぎる」

「すみません」

「まぁそこを責める気はない。美月は彼を純粋に慕っていたようだし、彼自身のこんな行動を予測できなかったんだろう。そもそも彼がこんな行動を起こしたのには理由がある。婚約者として突然美月の前に現れた俺を許せなかったんだ」

「薫さんのことを許せなかった?」

「ああ。婚約しながらも美月を振り回して、美月を悲しませ泣かせていたわけだからね。彼が怒るのも無理はない。そしてそんな彼の気持ちの矛先は、俺と婚約させた美月のお父さんにも向けられた。病院のために大事な娘を嫁がせようとする院長の心情を理解することができなかったらしい。彼は美月のお父さんのことを医者としてとても尊敬していたようだから、余計に腹ただしかったんだろう」

「そうだったんですか」

隠されていた名波先生の想いを知って胸がギュッと苦しくなった。

「だから彼は強硬策に出た。酔った美月をここに連れ込んでベッドで美月と抱擁している写真を撮り、それをネタに美月を脅して俺と別れさせ、そして美月のお父さんの病院で来月行われる次期外科部長選への院長推薦を美月本人からお父さんに働きかけてもらう。そして次期外科部長になり、病院内で地位を確立し、美月のお父さんの確固たる信頼を得て、社会的にも美月の相手として相応しい立場に身を置くこと。それが彼の目的だった。だが……」

そこまで言いかけると薫さんが視線を下に落とした。
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