お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
「優しすぎる彼には美月を抱くことができなかった。意識を失う寸前、美月の頰を流れる涙を見て心が痛み、ギリギリのところで思いとどまったらしい。彼は本当に心から美月のことが好きだったんだろう。その恋心が彼の最大の誤算だったわけだが、そのおかげで美月が傷つかなくて済んだんだ」

「そうだったんですね。でもどうして名波先生は、薫さんをここに呼んだんですか?」

「俺の本心を確かめたかったと言っていた。美月に対して愛情があるのか、遊びなのか。すぐに飛んできた俺を見て彼は『天下の九条グループのご子息が血相を変えてご登場とは笑ってしまいます。これは傑作ですね』と言って切なげに笑ったよ」

「俺は美月に手を出そうとした彼を目の前にして嫉妬と怒りで気が狂い殴りかかりそうになったが。今回のことは美月を冷たく突き放してしまった俺にも責任があるからな。寸前のところで彼を殴るのはやめたんだ。そして冷静になり彼といろいろ話をした。そして彼は最後に美月を俺に託すと言って、深々と頭を下げて部屋を出て行った。美月には本当に申し訳ないことをしてしまったと何度も謝っていたよ」

徐々に事を理解し始めると胸の奥底の騒めきが大きくなっていくのを感じていた。
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