お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
蝶は甘い独占欲に溺れゆく
胸に交錯する様々な想いを今すぐにここで整理することは、あまりにも難しい。

「美月、そのままでいいから俺の想いを聞いてくれないか?」

黙り込んだ私に薫さんの甘く掠れた声が届いた。向けられた表情はどこか切なげに見える。私がコクンとうなずくと、薫さんが私の手に自分の手をそっと重ねて、ゆっくりと話しだした。

「恥ずかしい話だが美月と喧嘩別れしたあの日、俺の心は名波先生への嫉妬心で一杯だったんだ」

「え?」

「彼の前で美月はいつも自然体で柔らかく笑っていて、とても心を許しているように思えてね。俺の前じゃいつも困った顔をして身構えているからなんだか悔しかったんだ」

「薫さん……」

「そしてあの日、美月に触れている彼の姿を見て気持ちが抑えられなくなって、美月に無理やり手を出そうとしてしまった。美月にそれを拒絶されて頭に来て『勝手にしろ』と突き放してしまったんだ。美月の気持ちも考えずに申し訳なかったと思っている。本当にすまなかった」

薫さんが頭を下げた。まさかの薫さんの行動に驚いて私は身体を起こしてそんな薫さんの肩に手を伸ばす。
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