お見合いから始まる極上御曹司の華麗なる結婚宣言
「俺と同じ？」

「はい。実は薫さんが海外出張から帰ってきたあの日、偶然薫さんが女性と歩いているところを見たんです。親しげに腕を組んでいて。それを見たら胸が苦しくなって……嫉妬したんです。だからあんな酷いことを言ってしまいました。愛想を尽かされても仕方がないし、私たちは親の命令で一緒にいただけなので薫さんに他の想い人がいてもそれは受け入れなければいけないと……」

「美月、俺の心にいるのはおまえひとりだけだ」

次の瞬間、言葉に詰まった私を薫さんが優しく抱きしめた。久々に感じた薫さんの温もりに胸がキュッとなって視界が滲んでいく。

「でもあの女性が……」

「あれは俺の妹だ」

「え？」

「前に言っただろう。歳の離れた妹がいると。家族の顔合わせのとき、妹はフランスに留学中だったから会えずじまいだっただろう？　それがちょうど俺が海外出張から帰ってきたあの日、妹も一時帰国したから少し会って話したんだ。サプライズで美月にも会わせたかったんだが、美月と喧嘩してしまって会わせずじまいになってしまったんだ」

「私、とんでもない勘違いをしてしまっていたんですね。本当にごめんなさい」

勝手に誤解して暴言を吐いた自分が嫌になった。なにより一途に愛情を注いでくれていた薫さんを疑ってしまうなんて、私は本当に最低な人間だ。

「謝るな。美月はなにも悪くはない。ただほんのすこしばかりすれ違ってしまったようだな。でもまたこうやって美月に触れることができて本当に嬉しい」

薫さんが私の頭にそっと手を置いた。
< 89 / 152 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop