復讐目的で近づいた私をいくらで飼いますか?

私の宿敵、『藤堂 新』。

藤堂ソフト株式会社を後(のち)に継ぐ、私と同い年27歳の若手副社長。彼は社長の息子で、いわゆる御曹司だ。
仕事ができるハイスペックさだけじゃない。美形で女性人気も高く、なおかつ…。


「Ms.明乃(あけの)。お久しぶりです。日頃からまた足を運びたいと存じておりました。」


天使みたいな笑顔で明乃ことママに近づくと、ママはもうご満悦そうな表情だ。

ーー相変わらず相手の懐に入るのが上手い。

そういうところが『昔から』大嫌い。
可愛い顔して目上の人に気に入られる術を知っているあたり、私とは大違いな人。

なんていう風に心の内で悪口を並べていると、ママに手招きされてハッとした。


「本日担当するのはこの子。」

「純連です。よろしくお願いいたします。」


軽い自己紹介をすると、目の前にいる新は柔らかい笑顔を見せて奥のソファへと進んでいく。


(幼馴染相手に顔色一つ変えないんですね!)


それもそうか。


『人前では他人のフリして』


と、過去に言い放ったのは私なのだから。









久々の再会。頭のてっぺんから足の爪先まで緊張する。
同じ街に住んでいても、相手は雲の上のような存在。


それに比べて私は……


………藤堂ソフト株式会社に買収されたH.I.T株式会社の元社長令嬢…。


「……早速注文お願いしたいのですが」

「はい」


ボトル単位の注文。さすが大富豪が住むと噂の街だけあって、価格は目が点になるほどのものばかり取り揃えられている。
< 3 / 45 >

この作品をシェア

pagetop