本当にそれでいいですか?

結婚当初から隆也(たかや)の浮気には悩まされてきた。
一度目は一人娘の彩佳を妊娠中の時。
最初こそは平謝りだったが、それが2度3度繰り返されるうちに彼の態度も横暴になってきた。

自分の失態を認めず、私の色気の無さを指摘し、「お前に魅力がないからだ」と罵るようになった。

「もっと気の利いた妻だったらな〜」
「本当お前はとろくさい。もっと俺が居心地のいい空間をつくれよ」
「まじでお前の顔を見てると辛気くさくなる。もっと綺麗にしたら?」


そう繰り返しては次第に家に居着かなくなった。
もちろん家事や子育てを手伝って貰った記憶もない。
だから娘の彩佳も当然なついていない。
父親のことを「あの人」呼ばわりで心底毛嫌いをしているのは当たり前のこと。


「もうあんなモラハラ男となんて別れちゃえばいいのに!」


それが娘の口癖。
それでも私が別れなかったのは現にお金のためだ。
始めの頃はショックで苦しくて泣き続けた日々もあったが、高校生の頃事故で両親を亡くしてる私には他に頼る場所がなかった。
兄妹もなく一人っ子の私には悔しいが、隆也の元で金銭的に援助してもらうのが一番の道だと思ったのだ。

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