第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
ノアは両手で軽く頬を押さえて、気持ちを落ち着かせてから言った。
「からかわないでくださいお嬢様。その、で、デートっていうわけでは……」
「ふふ、いつの間にプライベートで遊びに行くほど進展していたのかしら」
「お嬢様!」
既に二人が想いを伝え合った可能性もゼロではなかったが、この反応を見た限りまだそこまでではなさそうだ。
お互い想い合っており、何となく察しているにも関わらずまだ決め手となる言葉はない。少女漫画なら一番甘酸っぱくてドキドキするところだ。
さらに問い詰めてやろうかとアリシアが口を開きかけたとき、馬車がゆっくり止まった。
王都に着くのは昼頃だという話だったが、今日はまだ出発して一時間も経っていない。何かのトラブルだろうかと外に目を向けると同時に、コンコンと戸が叩かれた。
開けるとそこには、前方の馬車に乗っていたはずのカイが、いたずらっぽい笑みを浮かべて立っていた。
「アリシア殿、少し寄り道をしていかないか?」
「寄り道ですか?……わっ」
首を傾げるアリシアは、カイに手を強くつかまれ、そのまま勢いよく引っ張りだされた。
思わず目を瞑ると、彼のがっしりとした力強い腕に抱きとめられた。