君を輝かせるのは私だけ。

様子がおかしい俺にみんなの視線が集まる。

「ハサミも救急セットから持ってきたけど切れそう!?もっとしっかりしてないとダメかな!?お兄ちゃん!?聞いてる!?」

体を由香に強く揺さぶられて、

ようやく開いた口。

「…血。」

みんなが俺の視線を追って、俺の手をのぞく。

それはシューズの外側を触っただけなのに、

俺の手を赤く染めていて。

先生が慌てて、ハサミで切ると、

シューズが落ちる。

いつもなら、ポスンとか、コロンっていう表現のシューズが落ちて転がる音が、

ドスンとか、べちゃっという嫌な音がする。

血をたっぷり含んだそれが落ちた衝撃で床に血が少し飛ぶ。

え…

落ちたシューズはもともと黒だけどすごく特有の匂いを放っていて、

色が左右で違う。

真っ黒の靴下も気づかなかっただけで血を吸い込んでいて、

ようやく見えたあおの足は、

この世のものとは思えなくて。

何人か倒れそうになる。

ねぇ、なんで。

なんでこんな足であんなに戦えたの。

なんでこんな足であんなに無茶したの。

なんでこんな足で彼女をコートに立たせたの。

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