君を輝かせるのは私だけ。

「ちょっと、だれあの子!」

女子の監督がうちの監督にすごい勢いで聞くのを、

健さんが嬉しそうに笑って、

「うちの自慢のコーチです。ついでに俺の妹!」

と返すと、

女子のキャプテンさんが、

「ちょっとー、蒼井くん?聞いてないけど?教えてくれてもいいじゃない。」

とやられたって表情で返す。

なんか嬉しいようで嬉しくないと言うか…

あおの凄さが知れ渡るのはすごいいいことだけど、

自分たちだけが知っていたいような…

「あ、」

渉が打ち損じたボールがこっちに転がってくる。

あおが取りに来る。

「す、すみません!」

「はい、あお。」

「ありがとうございます。」

俺が拾ってあおが伸ばした手にボールを乗せる。

けど、そのあと中々ボールを離さない俺に、

あおは首を傾げて不思議そう。

俺自身も何がしたいかあまり定かではない。

「祐真さん?どーしました?」

「んー…」

「どっか痛いですか?体調悪い?」

どう伝えようか迷っていると、

だんだん心配そうになるあおに慌てて、

「いや、そうじゃなくて…」

と返すと、

あおが納得したように、

「あ!渉の成長に驚いてます?ね、すごいですよね?私も驚いてます!」

なんてどこからその回答が出てきたのか嬉しそうに笑うあお。

…俺もそう思うけど、

思うけどさぁー違うよ!
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