【番外編】好きの海があふれそう
プロローグ ~3家族の出会い~
出会いは突然やってくる。



暮名 杏香(クラシナ キョウカ)。28歳。結婚して4年。



今日、隣の家に若い夫婦が引っ越してきた。


*


夫の小太郎(コタロウ)はとても忙しい。



小太郎との出会いは6年前、大学を出て出版社で働き始めたころ。



ちょうどそのとき取材することになったカメラマンが小太郎だった。



小太郎はあたしよりも4つ年上で、その頃から世界中を飛び回っては色々な写真を撮り続けてきた。



写真のことなんて何もわからなかったけど、あたしは小太郎が醸し出す、適当で無神経そうなオーラと、彼が撮る写真の世界観の繊細さのギャップにハマってしまった。



それから2年の交際を経て結婚。



今は生まれて2ヶ月の娘と3人で暮らしてる。



暮らしてると言っても、世界中で仕事をしている夫はほとんど家にいない。



だから、毎月現地で撮った写真をポストカードにしてハガキを送ってくるのがあたしの楽しみだ。



そして今日は、久しぶりに小太郎が帰ってきている。



久しぶりということで、家には、小太郎の小太郎の4歳下の妹の実咲(ミサキ)ちゃんと、その夫の悠胡(ユウゴ)くんが来ていて。



みんなで鍋パーティーなんだ。



実咲ちゃんはあたしと同い年。



目がまんまるで大きくて、目鼻立ちがはっきりしていて、白い肌と黒い髪の毛の対比が綺麗な清楚でかわいくて美人な子だ。



大学生のときに学生結婚した悠胡くんとは今年で結婚10年目になる。



あたしと実咲ちゃんは仲が良くて、休みの日によくお互いの家を行き来してる。



今日は、専業主夫の悠胡くんが作ったお菓子を持ってきてくれたらしい。



2ヶ月後に娘が産まれる予定の実咲ちゃん家では、将来娘に作ってあげたいと言って、悠胡くんがはりきってお菓子作りにいそしんでる。



悠胡くんは、実咲ちゃんと長く付き合ってる分小太郎との付き合いも長い。



だから2人もすごく仲が良い。



杏光はいつもよりも人が多いのにスヤスヤ寝てる。



居心地が良いのかな。



そのとき、家のインターホンが突然鳴った。



「?」



宅配便かな…?



だけど、ドアの向こうに立っていたのは宅配便ではなく、見慣れない若いご夫婦だった。
< 1 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop