哀 夏 に 、
溶かす



「ねえ、前みたいに送ってよ」

「…別にいいけど、何?」

「たまにはいいじゃん」




夏の夜は、あんまり好きじゃない。

多分これからも、好きになることは無い。




「変なの、一緒に歩いてる」

「お前が送れって言ったんだろ」

「たまには私のワガママも聞いてよ」



夏の暑さ、好きじゃない。

冬の方が私は好きだけど、冬は起きれないから好きじゃないって、私がいつも起こしてた。



「ここのコンビニの店員さん、絶対わたしたちのこと覚えてるよね 」

「店員はそんな客の顔なんか見てねえよ」

「えー、そうかな、」



ふたりで行ってたコンビニ、一人で行くようになってから、私店員さんの顔覚えたよ。

煙草、私は吸わないのに私がレジに並ぶと、わかったように取ってくれるんだよ。



「夏、終わらないかな」

「冬が来る方がこえーよ」

「冬のほうがいいなあ」




冬、までに。

忘れられるかな。


気だるそうに歩く後ろ姿も、引きずってすぐ壊す靴も、自分の首に回す大きな手のひらも。



…きっと、忘れることは無いんだと思う。

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