哀 夏 に 、





はは、と乾いた笑いが耳にやけに響いた。


今にも泣きそうな顔をして、それでも泣かないとこらえているその表情に、いつまでも向き合おうとしなかったのは自分だ。


話し合うことから逃げていた。
「いってらっしゃい」と、俺を見送るその姿に振り向かなかった。

ずっと、その優しさに甘えていた。



「…ごめん」


何も言い出せなかった口からこぼれたのは一番薄っぺらくて、最低な言葉だ。

情けない顔をしている俺は、今までで一番傷ついたような顔をしたそこから目をそむけることなんて、できなかった。


目の前にいたその距離が、どんどん遠ざかる。

そこに手を伸ばせないのは、
これ以上傷つけてしまうのが怖かったからだ。



「好きだったよ、わたしは、ずっと」



俺も好きだった。

なんて言えなかった、言ってしまえば、引き留めてまた傷つけてしまうと思った。




無理矢理笑うなよ。

弱ったときにそう声をかければ、我慢を切らしたように泣いていた。



いま、我慢をさせているのは俺だ。




「バイバイ」



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