溺愛音感


「できた……」

「簡単だな」

「ミツコさんは兼業主婦だから、時短料理を極めなくちゃ厳しいんだって。マキくん、先にシャワーする?」

「いや。昼を食べるタイミングを逃して、空腹なんだ。ハナがよければ、このまま食べたい」

「うん。わたしもお腹空いてる」


炊きあがったごはんをお皿によそい、出来たてのカレーをかけて、こちらもミツコさんに教えてもらったお手製の福神漬けも添えた。

パックから器に移しただけのミックスリーフのサラダも付ければ、何となくちゃんとした晩ごはんに見える。


「いただきます」

「……いただきます」


ここのところ朝昼晩と食べ続けていたから、味つけにまちがいはないし、細切れ野菜が加わったとしても、おかしなことにはなっていないと思う。

けれど、ついマキくんがどんな反応をするのか気になって、じっと見つめてしまった。

スプーン山盛りにカレーとごはんを載せ、口に入れたマキくんは何も言わない。

そのまま、二杯目を食べる。

三杯目、四杯目……五杯目になったところで、我慢できずに訊いてしまった。


「マキくん、あの……」

「ああ、感想を言うのを忘れていたな」

「お……美味しい?」

「不味いものを食べているように見えるか?」


ストレートに感想を言ってくれないのは、やっぱり口に合わないからだろうか、と俯きかけたところへ、待ちわびていた言葉が降って来た。


「美味い」


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