カラダで結ばれた契約夫婦~敏腕社長の新妻は今夜も愛に溺れる~
「いつもご迷惑をおかけしてすみません」

前回は朝食まで作ってもらい、今日はわざわざお土産を届けに来てくれた。

恐縮して頭を下げると「これも仕事のうちですから」と涼しげな微笑を浮かべる。

「では来週。時間がわかりましたら、ご連絡差し上げますね。おそらく夕方には帰宅できるかと思います」

夕方――ということは夕食のことを考えておかなければ。

彼の帰宅が嬉しい反面、どうやっておもてなしをすればいいだろうという新たな悩みが湧き上がってくる。

そもそも、世界中の高級レストランを渡り歩き、すっかりグルメに肥えている総司の舌に、主婦の手料理など合わないのではないだろうか。いっそ外食に行くべきか。

いやいや、せっかく帰ってくるのに、また出かけるのも億劫だろう。むしろ毎日外食を繰り返しているのだから、たまには家庭的な料理もいいかもしれない。

とはいえ、家の料理がマズいから帰ってきたくないなんて思われてもショックだ。

「あの……」

玄関を出ようとする真鍋を藁にも縋る思いで呼び止めてみる。彼は怪訝な顔で振り返った。

「その……総司さんの好き嫌いとか、ご存じないですか? 今まであまり手料理を食べてもらったことがなくて」

正直に相談してみると、真鍋は穏やかな顔でこちらに向き直った。

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