予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
プロローグ
私、吉木香澄は自宅のマンションでひとり、祈るような気持で天井を見上げていた。
震える手で持っているのは、プラスチックの細長いペンのような妊娠検査薬。そこには小さな窓がふたつついていて、それぞれ『判定』『終了』と書いてある。
『終了』の小窓に線が入っていれば、正しく検査ができたという証。そして『判定』の小窓に線が浮かび上がっていれば、陽性。つまり、妊娠しているという証。
何度も繰り返し説明書を読んで、使い方をしっかり確認してから検査をした。一分から三分待てばいいと書いてあったから、もう結果はでているはずだ。
「あー、もう。どうしよう、見るのがこわい……!」
不安のあまりひとりごとをつぶやいてしまう。
できるなら、なかったことにしてしまいたい。いっそこのまま結果を見ずに捨ててしまおうかな。
なんて考えて、いやだめだと首を横に振る。
わざわざドラッグストアで検査薬を買ってきて調べたんだから、ちゃんと確認しないと。
臆病な自分に活をいれるように、きゅっと唇をかむ。
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