予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
　もともとHAMASAKIが作ってきた馬具は、人と馬の命を預かる重要な道具だ。素材や作業ひとつひとつに至るまで手抜きや妥協は許されない。
　職人たちはみな、創業当時からの高い志を受け継ぎ、プライドを持ってバッグを作っている。
　
　小さなころから父の仕事や、真剣な表情で革と向かい合う職人たちの姿を見て育ってきた俺は、自然と会社を継ぎたいと思うようになっていた。
　
　そして大学卒業と同時に入社し十年。
　これまでは副社長として働いてきたが、三十二歳で社長に就任することになった。
　
　長いHAMASAKIの歴史の中で、三十代で社長を務めるのは異例だった。
　けれど、ECサイトの『TAPS』と提携し販路を広げ、業績を大きく伸ばしたことを高く評価され、俺の社長就任に異論を唱える者はいなかった。
　
　今まで社長を務めてきた父は会長になり、専務だった弟の二歳年下の綾人が副社長に就任する。

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