ロミオは、ふたりいない。

カタン…





成瀬のシャーペンが下に落ちた



「ハイ…」



床から拾って渡した



「ありがと」



「最近、成瀬、笑わないね」



「え?」



久しぶりに成瀬に話し掛けた



「いや、なんか…
前より、笑わなくなったな…って」



私のせい?



「うん…
無闇に笑うなって言われてるから…」



そーなの?


私のせいとかじゃなかった?


それなら、よかった



「成瀬のシャーペン、かわいいね」



「あ、コレ?
家族旅行のおみやげ
うち妹がまだ小さいからさ
オレ抜きで結構旅行行ってんだよね」



成瀬、妹いるんだ



久しぶりだけど

成瀬と普通に話せてる



「欲しい?」



「え?」



「欲しい?コレ?」



「え、別に、そんな気で…」



「木々羅にあげる!」



「え!
でも、
せっかく成瀬に買ってきてくれたんだし…」



「木々羅のと交換して!」



「私の?」



「うん、だってそれ木々羅にあげたら
オレ、シャーペンないもん」



成瀬は
私のペンケースからシャーペンを1本取った



「あ、ソレ…書きやすいのに…」



「知ってる
コレ、欲しかった」



そう言った成瀬は

キラキラ笑ってた



久しぶりに見た



成瀬の笑顔



「あ、笑った…
成瀬、笑った
無闇に笑わないって言ってたのに」



「今のは無闇じゃない
嬉しかったから、笑った」



「そんなに欲しかったの?
そのシャーペン」



「んーん…
木々羅と話せたから…」



キーンコーンカーンコーン…



次の授業のチャイムが鳴った



「んーん…
やっぱなんでもない
もぉ、笑わない」



また成瀬から笑顔が消えた




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