■王とメイドの切ない恋物語■
「この前のこと覚えてる?」




この前のこと?


「あの、トーマ様は私のもの。あんたなんか、ただのメイドよって言った…」

「あぁ…。はい、覚えてます」

嫌な思い出が、よみがえる。


「ごめんなさい…」

え?

「ごめんなさい、リリア。わたくし、トーマ様がなかなか振り向いてくれないから、イライラしちゃって、それでリリアに八つ当たりしちゃったの」

そうだったんだ…

チチリさんが、言ってた、エリザベス姫が焦って、私に嫌み言ってるっていうの、当たってたんだ…




「リリア、ごめんね」

エリザベス姫は、辛そうに目を伏せた。

エリザベス様・・・。


「いいんです、もう忘れました」

私は笑顔で、エリザベス姫の方を向いた。

エリザベス姫も、片思いで辛いから、イライラしちゃったんだよね。



片思いは辛いし、切ないもん。

エリザベス姫の気持ち、わかるよ。

だから、怒れないよ。




「ありがとう」

エリザベス姫は顔をあげ、うれしそうに笑った。

< 119 / 396 >

この作品をシェア

pagetop