■王とメイドの切ない恋物語■
「今日、午後からフリーだったから、ルアンと会ってたの…」


私は頷いた。

ルアンとは、チチリさんの彼のことだ。

会ったことはないけれど、チチリさんの話を聞くかぎりでは、責任感の強い、好青年という感じがした。


私は、チチリさんの話の続きに耳を傾けた。


「今日も、いつものように川辺でデートして、楽しく過ごしたの。いつもと同じだったのに…」


チチリさんの言葉が、途切れ途切れになってくる。


「帰りぎわになって…
ごめん、もう…別れよ… うって」

外を見つめるチチリさんの頬を、一筋の涙が伝う。

チチリさんは、涙を拭った。

私は、チチリさんの手を握り締めた。
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