■王とメイドの切ない恋物語■
「リリア…ありが…とう」

チチリさんは、私に抱き締められたまま、つぶやいた。


「うん」


私は、抱き締める腕に少し力をこめた。

こんな弱ったチチリさん、見たことない。



もう見ていられない状態だった。


チチリさんが落ち着くまで、ずっとそばでついていた

このままじゃいけないよ。

こんな終わり方ないよ。

私は、チチリさんの部屋を出るとき、決心した。



ルアンさんに、会いにいこう。

理由を聞いてみよう。


言ってくれないかもしれない。

でも、このまま何もしないよりは、はるかにいい。



私は支度を済ませ、以前に聞いたことのあるルアンさんの職場に向かった。


大きな店だから、覚えている。

彼は、店の隣に建っている寮に入っていると聞いた。


チチリさんと別れてから、4時間は、経っているはずだから、きっと寮に戻っているはず。



私は足早に、ルアンさんの寮に向かった。

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