■王とメイドの切ない恋物語■
「それなら、あれがいいな」

トーマ様が、背伸びして、上の方の本を取った。

本当、背高いな。

私じゃ絶対あんなとこ届かないよ。

「はい、これ」

1冊の本が、手渡された。

「ありがとうございます」

私は本を見つめた。

「この本は、結構気に入ってて何回か読んだ本なんだ。よかったら読んでみて」

「はい!楽しみです」

ちょっと古い本だけど、トーマ様のお気にいりの本なんて、ワクワクしちゃうよ。

どんな本なのかな?

後で読もうっと。

私は、ルンルンで本を抱き締めた。

そんな私を見て、トーマ様が、ポツリと小さい声で


「かわいい」

「へっ?」

私の声が、上ずる。

「あ…、いやっ、何でもない」

トーマ様は、あわてて向こうを向いた。




ドクン ドクン

トーマ様の一言で、急に心臓が早く打はじめる。

え?あの、今のは…?

聞き間違いじゃないよね?

何が?

なんのこと?

今日のトーマ様、なんだかおかしいよ。

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