■王とメイドの切ない恋物語■
トーマ様は、大臣が廊下からいなくなったのを確認すると、部屋の鍵を閉めた。

「リリア、会いたかった」

トーマ様は、そう言うと、私をぎゅっと抱き締めた。

「私も、私も会いたかったです」

トーマ様の背中に腕を回した。

「お忙しいところすみません。凄く会いたくて、来てしまいました」

トーマ様は、優しく私の髪を撫でる。

「いいんだ、大臣にはうまく言っておくから。それより、リリアが会いに来てくれたことが本当にうれしいよ」

トーマ様は、また少し抱き締める手に力をこめた。

はう~ 幸せだー

しばらく抱き合った後、トーマ様が思いついたように、机に向かった。


なに?

スケジュール表を、ペラペラめくっている。

「リリア、明後日の3時からなら時間がある。マーヤには言っておくから、あの公園でも散歩にいかないか?」

「え?いいんですか?その日は、仕事が5時まであるんですが」

トーマ様は、頷き、

「いいよ、本当は、仕事もやめて、ずっとそばにいてほしいくらいなんだから。メイドやってもらってるのも辛いんだ。ごめんな、働かせてしまって。クリスマスまでの我慢だから」

切なそうな目で、私を見た。

そんな、全然いいよ。

「いいんです。メイドの仕事、好きですから。トーマ様のお役にたちたいし。だから気にしないでください」

私がそう言うと、トーマ様は、すごくうれしそうな顔をして、少し赤くなり、

「リリア、本当に可愛い。あー、離れたくないな。・・でも、大臣が怪しむといけないからな」

「そうですね」

私はうなづき、時計を見る。20分経過していた。

そろそろ帰らなきゃね。

「トーマ様、会えてうれしかったです。では、また」

「あぁ、ありがとな。じゃまた明後日な」

そう言うと、ドアまで送ってくれた。

トーマ様の部屋のドアが、閉まったのを確認すると、私はそのまま、チチリさんの部屋に向かった。

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