■王とメイドの切ない恋物語■
「ラノス様、本当に困ります。やめてください」

「いいから、いいから。別にトーマも怒ったりしないよ」

いや、怒ると思う…。

絶対、怒ると思う。

トーマ様が心配すると思って、ラノス様に言い寄られていることは報告してない。

聞いたら、トーマ様、怒るだろうな…。



「じゃあ、行こうか!」

ん?

「どこにですか?」

私が不思議そうにしていると、

「決まってるだろ、トーマのとこだよ」

そう言うと、ラノス様は私の手を取り、ぐいぐい引っ張っていく。



「離してください」

「だって離すと来てくれないだろ?」

あたりまえじゃん。

もうー、何とかしてーっ



ごちゃごちゃもめてる間に、トーマ様の部屋の前に着いた。



「トーマ、入るぞ」

ラノス様は、手をつないだまま、扉を開けた。

「いやっ、離して」



扉の向こうには、トーマ様が驚いた顔でこっちを見ている。



その隣には…


ジュリア…。


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