■王とメイドの切ない恋物語■
そんなこんなで、専属メイドになって1週間。

絶対、好きになってもらう宣言通り、ラノス様は乙女心をくすぐる発言を連発している。

好きだとか、可愛いとか。

髪型なんかも誉めてくれる。

そしてラノス様は、とても優しい。

私、メイドとして、そばにいるのに、荷物とか私から奪ってでも持ってくれて、メイドやってる意味が全然ないよーっ。

うぅぅ。




正直、かっこいいラノス様に、可愛いとか言われたり、優しくされると、嬉しくなってしまう。

だけど、私にはトーマ様がいるもの。

だから、ごめんね。ラノス様。





「リリアー、ちょっとは俺のこと考えてくれるようになった?」

ラノス様が、笑顔で聞いてくる。

「いや、あの、私、仕事中なので」

変な返事になってしまう。

困るよー。

かっこいい人に好かれるのは、すごくうれしいけど、本当に困る。

私は、トーマ様一筋だもん。



「じゃあさ、来週あたり、どっかでデートしようよ」

じゃあさって何だよ。会話つながってないし。



「こっ 困ります そんなこと」

私は、うつむいた。

ラノス様は、私の顔を覗き込んだ。

「リリアは照れ屋さんだな。そんなところも、すごく可愛いよ。あー、俺の家につれて帰りたい。片時も離れたくない」

え?

いやいや、本当困りますよ。

本当に。

勘弁です。




私が、黙って首を振っていると、ラノス様は、何やら思いついたみたいだ。

「リリア、トーマにリリアをうちに連れていかせてくれって頼んでみるわ。そしたら、ずっと一緒にいられるしな」

ひーっ。 

なんてこと言い出すんだ、この人は。

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